病院の案内

神經鞘腫の經過觀察でCT撮影と診察に岡山大學附屬病院へ行つた。
最近の大病院は再診の場合――人件費削減の爲なのだらう――診察劵をコンピュータに通し、受附を行ふ(後々この解釋は間違だと教へられる)。受附後何處へ行けばいゝのか書かれた紙が打出される。その紙には「CT撮影は、CT室、36〜39番の前でお待ちください。」と云つた事が書かれてゐる。これを見て私は「36〜39番」が「CT室」だと思ひ込んでしまつた。病院内をうろうろしてゐると、その番號が掲げられた部屋があり、私はその部屋の前で待つた。だが30分經つても音沙汰なし。待つ事は大病院ではよくある事だと思ひつゝ、一抹の不安を感じた私は近くの窓口らしき場所でどうなつてゐるのか訊いた。

(打出された紙を見せながら)「此處で待つてゐればいゝのですか?」
病院側
「此處(窓口らしき場所)を通さないと(いつまで待つても)駄目です。」

最初にコンピュータを通すのは受附を行つてゐるのではなく、單に、患者がどの科の窓口へ行けばいゝのかを示すだけであつた。受附そのものは科の窓口で行ふ事になつてゐるやうだ。私はコンピュータを通した時點で――部屋番號まで指定してゐるので――斯樣な手續はもう終つてゐると思つてゐた。そして――

病院
「場所も違ひます。此處は整形外科です。神崎さんの行くところはCT室です。」

部屋番號は各科で振られてゐたのだ。二桁(しかも30番代)にもなればダブつてゐるなんて考へもしなかつた。
私が不注意なだけなのかもしれない。慥かに打出した紙には最初に行くところは「CT室」と書いてある。でも同じ行に部屋番號まで書かれてゐたら、そつちに目が行かないか?私は目が行つた。だから部屋番號を當てに探し、見附けた部屋の前で待つた。番號まで指定してゐるのならば順番が來ればその部屋から看護師が出て來て呼んでくれると思ひ込んだまゝ。
最初に打出す紙の内容が叮嚀すぎるのだ。叮嚀すぎて返つて混亂するのだ。各科で受附けるのならば、最初の段階ではどの科へ行けばいゝのか――それだけ解れば充分。どの部屋へ向ふかは行つた科で教へてくれゝばそれでいゝ。
しかし、かう云ふ場所は常に「より叮嚀」を求められてゐるから、私の望むやうになる事はないだらう。