親切をさり氣無く

書樣に據つては自畫自讚してゐるみたいになつてしまふけど、それは私の文才の無さと云ふ事で許して下さい。
通勤途上電車が發車するのを坐席に坐つて待つてゐた處、對面に大きなお腹の女性が坐りました。私が坐つてゐたのは進行方向向き。やはり此處は替つてあげるのが親切かと思ひ聲を掛けようと思つたのですが、タイミングが中々掴めません。坐つて直ぐに言ふのは却つて迷惑かもしれないし、女性ですから身嗜みを整へてゐる*1し、携帶電話を弄くつてゐるし、それ以前に姙娠してゐるんぢやなくて、普通に太つてゐるだけだつたら大變な失禮になるのではないかとか、それはそれは色々な事が頭の中を驅巡りました。それでも女性の作業が一通り終つた樣なので、思ひ切つて聲を掛けました。その女性がこれから目を閉ぢてゆつくりしようかと云ふ餘り宜しくないタイミングで。
「席、替りませうか?」
女性がお斷りになられたので、結局その儘行つた訣ですが、斯樣な行爲をさり氣無く行ふのは難しいものですね。一番お洒落なのは、女性が坐る前に氣附いてすつと入替る事でせう。私の樣に色々考へてはいけません。

*1:ファンデーションを塗る樣な事はされてゐない。髮を整へる程度。